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さらさらと消えていくものを、端から綴る。

『天使にラブ・ソングを〜シスター・アクト〜』まぁ様がデロリスだった話(1)

前回の投稿から、75日前!

なんだかもっと経ったような、でも一瞬だったような。ずっと楽しみにしていた『天使にラブ・ソングを〜シスター・アクト〜』の東京千秋楽で、今年の観劇納めをしてきました。

 


Sister Act 60 sec SPOT

このシルエット、超絶美しいですね。

いやー、もう本当に楽しかったです。色々感想を書こうとしても、結局それに尽きる。

本当に、ずっと楽しい。一幕も二幕も楽しくて、そして最後のカーテンコールまで漏れなくずっと楽しい。今日は、こんな楽しいものがもう観られないなんて、と思うと寂しくて泣けるくらい楽しかったです。

幕が開いた瞬間からトップギアで楽しくて、それが一幕のラストでばーんと爆発してからは、二幕からカーテンコールまでずーっと手加減なしに楽しい。熱狂してる間に「本日の公演はすべて終了しました」まで輸送されてく感じ。ハッピージェットコースターミュージカルだな、と。

子どもの頃、クリスマスに家族で観るのが習慣だった映画を、大人になった今、想像の1000倍楽しいミュージカルで観られるなんてなぁ。幸せですね。

あまり軽率にものを好きにならなくなってきたけれど、好きなものが多いと、何年か後に思いもかけないプレゼントをもらえたりして、来年はもっと軽率に好きになってた頃の自分を取り戻そう、と思ったりした2019年の年末でした。

個人的には、東京楽=シスアク楽ですが、むしろこれから全国に愛と歌が広まるはずなので、ネタバレ満載の感想はたたみます。

今日の東京楽中心の感想なので、どうしてもデロリスの話多めですが、『Little Women』もそうだし、なんだか今年は「出てくる人みんな好きになる舞台」ばかりに当たっていてしあわせだな、と思いました。

 

 

 

デロリス・ヴァン・カルティエ朝夏まなとさん)

個人的な話をしますが、一年前、シアターオーブで千秋楽に駆け込みで『マイ・フェア・レディ』を観たのが、まぁ様を生で観た初めてでした。

あのとき「え、何、このべらんめぇイライザ素敵過ぎません? ずっと下町のイライザだったらいいのに」と思ったこと、そして「いつかもっと踊ってる朝夏まなとさんが観たいな」と思ったことを覚えてます。

それがきっちり一年後、同じオーブで最高の形で叶ったなという舞台でした。

好きだったところ、具体的に100くらい言えるんですけど、なんていうか、『Little Women』のときと同じで、「まぁ様ってデロリスだったんだなぁ」という感想に尽きるんですよね。

それがすごく不思議なところで、映画のデロリスとは明らかに違うんです。

いやまぁ、大枠ではもちろん同じキャラなんで同じなんだけれども、映画のデロリスを求めるなら、たぶんやっぱり森公美子さんが最強だと思います。

森公美子さんのデロリスは、キャラとして「なんやかんやここまで好きなようにハッピーに人生を生きてきた」安定感があって、その自己肯定感がまったくブレない感じ。

なので、修道院に匿われていても、なんとなく「通り過ぎる人だな」というのがしっくりくる気がしました。お守りのロザリオも一応受け取ったけど、ほんとになくてもよさそう。なんだろう、シスターたちがのび太で、デロリスがファンキーなドラえもん、というか。笑

ラストも、ドラえもんのび太にほだされて、本当はもう現代にいなくてもいいんだけど、「しょうがないなぁ、ちょっと残ってやるか」という感じがするというか。笑

映画のデロリスのイメージも、私はこっちでした。デロリスって、人情にほだされたりもするけど、一人で基本平気そうなんだよね、という。そこが好きでした。

森さんのデロリスっぷりは、説得力がありあまる歌も含めて、ああこれこれ! って1000回頷きたくなること間違いなしです。例えば母に勧めるなら、私は森公美子さん版を推します。

そして、自分と同年代や、自分より下の年代の子になら、私はまぁ様版を薦めます。

『シスター・アクト』って脚本自体が描いているデロリス像が、微妙に『天使にラブソングを』のデロリス像とは違う気がしたのですが、なんとなく「若くて青い」んですよね、全体的に。

その「青い」感じが、まぁ様のデロリスは際立っていて、そこがすごく魅力的。デロリスって感情移入できるキャラだったんだな、という発見がありました。笑 まぁ様デロリスは、キャラクターというよりは、人間だった。

映画版と森さん版は絶対に同じ世界で生きてないキャラを見せてもらってる感じだった分、それがすごく新鮮でした。

たぶん「何者かになりたい」という気持ちをまだ燻ぶらせている世代には、かなり効くデロリスなんじゃないかな、という気がしました。

まぁ様デロリスも、もちろん歌の面ではシスターたちを導くんだけど、それ以外は結構ゆらぎがあるというか。

断食の後の、不意打ちでされるそんなに急につめなくても修道院長様…!のお説教タイム(マジで容赦ない)も、ぐさっと身にしみてる感じがリアルです。修道院での経験が足りないものを埋めてくれた、というのがしっくりくるデロリス。

このデロリスには助けが必要だし、だからロザリオは受け取って大事にしてるんだろうな、と。そして、ラストの選択のシーンでは、シスターたちとの友情はもちろん、「望みが変わった」と認める強さを持てたことに涙できるデロリス像だな、と思いました。

「神様は理由があって、あなたをここにもたらした」の意味が、森さんデロリスだとデロリス:修道院=3:7くらい(映画もそんなイメージ)で、まぁ様デロリスだと完全に5:5なイメージです。

もちろんどちらのデロリスも、それぞれ最高です。それは大前提なので、書く必要もないくらい。永遠にシアターオーブにいたかった。本当に素敵でした。

なんだか湿っぽい感想になってきたので、もっと軽率にキャーキャー言いたかったまぁ様デロリスの感想を書きます。

 

やんちゃ感増し増しのデロリス

ああ、こいつお調子者だな、って一瞬でわからせる方法って色々あると思うんですけど、まぁ様デロリスはフルネームを名乗るときのウザさが最高でした。

「あのカルティエと同じ、カルティーエ!」と言う度に、なんで巻き舌にした? なんでジェスチャーをつけた? となるウザさ。笑

また、そのポーズを取ってると、シルエットがバービー人形みたいなんですよね。顔小さい、腕長い、脚は言うまでもなくいつもどおり順調に長い。

めちゃめちゃ細かいんですけど、カーティスなんていらないと歌いあげるシーンで、メイクルームでバッグを取る前に「見てみてよ、ベイビー」と歌いながら体をシェイクする動作もやんちゃ味があって好き。

あとこれは、修道院に入ってからなんですけど、嬉しくなると軽率に「ひゃっほーい!!」(そして本当にこう言う)と飛び上がって舞台袖にはけていくの、なかなか表現しようと思ってもできないと思います。単純に身体能力が高い

デロリスのやんちゃさ、「あたしはずっとおとなしくできないダメなやつだと言われてきた」という体が動いちゃう感じが200%表現されてて。

修道院に入ってからのデロリスは、なんだかディズニーのアニメーションを観ているみたいな動きがたくさんあるんですよね。それがぴたっぴたっと気持ちよくはまっていて、爽快でした。

 

「あたしはすかさず」の「すかさず」感

ダンスのキレは全編通して、確実にまぁ様デロリスの魅力。これはもうね、気持ちがいいです。あんなに動けたらと観ていて楽しくなるくらい、すべてのダンスが決まってる。最初に「ああ好きー!!!!」となるのは、冒頭のオーディションのところ。

まぁもう幕開いて見えるシルエットが、まず死ぬほどかっこいいわけです。上の動画のサムネイル画像ですね。

で、色々やった後、「お客がノッてきたら、あたしはすかさず」ってシーンがあるんですけど、ここで台詞が切られて、デロリスが華麗にターン。

このターンが! ああもうそうですね! それ以上のすかさずってないですよね! となる気持ちよさで、開始5分でもうこの役まぁ様当たり役だわ、ってわかります。あのオーディションをよく中断できるな、カーティス。

 

衣装と小道具の長さがゲシュタルト崩壊

ところで、ここで唐突にお衣装の話なんですけど。

胸下切り替えのミニワンピースって、普通、「脚を長く錯覚させるためのデザイン」じゃないですか。それが、まったくその錯覚必要ない。むしろ、もう少し下から生えててもいい。脚が長すぎて不安になるレベルです。

FMブーツに至っては、ニーハイブーツの概念が歪む長さ。普通の人ならもうそっから上、直に上半身や、という長さです。

ちなみに腕の長さが一番顕著になるのは、「みてよ、私よ」の歌でパープルのもふもふと戯れるところですね。どう考えても常人ならもっと垂れ下がって、なんなら床につく長さあるのに、腕も長いし背も高いのでまったく床につく気配がない。

それを、猫のしっぽみたいに振り回しながら、上手下手に歩いていくところの振り付けも大好きです。

そして、体型なんてまぶされると思っていた修道服。

これがもうまた、圧倒的に、細い、長い、なんかスタイリッシュ。むしろシスター姿でタバコを咥えて欲しくなるくらい小粋。

このときようやくわかりましたけど、みんなと同じシスター服を着てる時間がとっても長いので、パッと見でそれがデロリスだとわかる背の高さって大事なんですね。みんなと同じ服を着ても、きっちり主役に見える人がやる役なんだな、と。

ちなみにスタイルはもちろんですが、すぐに脚を開いたり、なんなら脚を組んだり、白い紐をぶんぶん投げ縄みたいに振り回したりするので、仕草でもどれがデロリスかめっちゃわかります。

喜怒哀楽をあの白い紐で表すの、まぁ様デロリスの技だなあと思いながら観てました。あれで修道院長様をぺしぺししようと思ったのは、すごいな度胸があるな、とも。笑

 

 「嬉しさ」は体で表現できるということ

はい、また内容に戻って。

『Raise Your Voice』を最初に観たとき、一幕が終わった後、口がきけなくなるくらい感動してしまったのですが、それはもうシスターたちの歌が素晴らしかったのは言うまでもないものの、でもそれだけじゃなくて。

だんだんと歌えるようになってきてみんなの顔が明るくなるところ、そしてそれを一生懸命促しているデロリスが本当に自分の体をめいいっぱい使って、彼女たちに魔法をかけているところ。

そして、いざ声が出た瞬間のデロリス歓喜の跳躍!

そこからは、右に左に、もはや3歩くらいで移動してるんじゃないかっていうくらい、ずっと飛び跳ねて舞台を端から端まで行き来するデロリス。

腕をつきあげたり、脚を跳ね上げたり、腰を落としてだんだん上がっていく振り付けをしたり。飛び跳ねながら、かまえるだけのシスターをかまって褒めてあげたり、そしてもちろん客席も煽って。

で、最後、デロリスがセンターに戻ってきて、もう嬉しさが四肢から溢れ出て止まらないとばかりに両腕をぐるぐる振り回す振り付けがあるんですよね。

そこでもうダメでした。デロリスがぱあああって笑って両腕を振り回しているところで、音楽がどんどん盛り上がって。あんなの泣く。

そこから更に、上手下手に気を送るみたいな振り付けをして。笑 デロリスだけぐるっと重心を落として、シスター全員の姿をなめるように両腕でさらう振り付け(説明が下手)があるんですけど、そこがもうダメ押しで、なんかちょっとした男役群舞の〆くらいかっこよくて!

ああ、今、魔法がかかった、と思いました。

気持ちの盛り上がりと、音楽の盛り上がりと、一幕のクライマックスというのとがすべていっしょくたになった地響きのような感動が、ぐわんぐわんまぁ様デロリスの手によって回されてるというか。

もちろん、シスターたちの合唱あってこそなんですけど、圧倒的に「私が世界を回してる」感があって、それはあの「嬉しさと高揚感を純度100%で体で表現してしまう身体能力」があるからだな、と。

私『ガラスの仮面』でマヤが亜弓さんのジュリエットを観て、「表現を叶える身体能力、そして技術力というの はものすごいものなんだ」となるシーンが好きなのですが、それを思い出したりした今回の観劇でした。

 

えーっと、全然語りきれてないのですが、あっという間に5000字なので、続きはその2でちまちまと語ります。

他の方に辿り着くどころか、まさかデロリスの話が終わらないとは……。永遠に観てたかったし、観終わった今、永遠に好きなところを反芻していたい作品になりました。