Mint

さらさらと消えていくものを、端から綴る。

『Little Women -若草物語-』まぁ様がジョーだった話

今日も今日とて、『リトル・ウィメン』の話をします。

 

朝夏まなとさんのジョーの何が好きだったかって、まぁもう、「ジョーそのものだった」ことなんですけど。

第一幕の最初、転がるように舞台袖から出てきたジョーを見た瞬間、「はい、ジョーです。これがジョーです。もう正解」という結論とともに席を立ってもいいくらい。

もうね、ぱっと見で圧倒的にまぁ様はジョーでした。

すごい。ジョーが生きてる、と思った。

 

とはいえ、それで話が終わってしまうと、後に反芻する楽しみがなくなるので、どこがどう好きだったかをもう少し細かく思い出して書いてみます。 

特に二幕以降は、私にとっては新たに見るジョーの顔が多くて、そして、ちょっとした台詞回しや表情・間の取り方で、改めてこのジョーが好きだなと思うことがたくさんありました。

いやー、ね。ジョーが好きなんだよなぁ。

だいぶ記憶があやふやな部分もあるので、完全に個人的な備忘録ですが。

こちらもこちらでネタバレになるので、ここから先はたたみます。

 

 

 

 

ジョーだなと思ったポイントを8つ思い出してみる

はい、それぞれサクサクといってみます。

 

1.シルエットがジョー

あの、これはもうまぁ様のシルエット=ジョーだった、というだけの話なんですが。

ジョーはね、「ちんちくりん」という言葉の真逆にいるキャラだと思うんですよ。

背はすらっと高くあってほしいのは大前提ですし、そして単に背が高いだけじゃなくて、できれば、手脚もすくすくと育ちすぎた感じであってほしい。無駄に伸びやかであってほしい。

それがね、もう言うことなしでした。いや、そもそも朝夏まなとさんのスタイルなので、観る前から何の心配もしてませんでしたが。

それにしても、お見事! の一言です。

むしろ背が高すぎて、他の登場人物とのバランスを取るためか、終始おそらくフラットのブーツを履いてたのが印象的。いやいやいや、背が高い。シンプルにスタイルがいい。

エストがしまったロング丈のスカートに、手首まで覆われるブラウスでもわかるくらい、細長く直線的な感じ。

ジョーとして完璧なシルエットだな、と思って観てました。

ちなみに、マーチおばさまに「あなたには無理!」と大きな木の下で貴婦人ポーズをいろいろ取らされているとき、上げた手が、がんがん木の枝に当たってました。腕が長過ぎるんだな…。笑

 

2.たぶんスカートを履いていることを忘れて生きてる

ジョーのお衣装は、基本、ブラウス×ロングスカート。そして、ときどきベスト。色味もどちらかというとくすんだものが多くて、おとなしめ……なんですけど、全然おとなしく見えない。笑

それがすごくジョーだな、と思いました。

まぁ、これは一幕ずっとという感じなんですけど、マーチおばさまが見たら「ジョセフィーン!!」と、額に青筋立てて叫びそうな角度に脚をがっつり開いて、楽しそうに座っているまぁ様ジョー。

履いているのは本当にスカートですよね? というレベルで、自在に脚を開いてます。笑

たしかに丈は長いし、開いたところでどうということもないか、とうっかり納得しそうになるナチュラルさでがっつりと。

その膝の上で頬杖をついたり腕を組んだり、かと思えば、バサッと跳ね上げて立ち上がったりと、ともかくある意味スカート捌きが超絶スムーズなんですよね。

何度も座り込んで小説を書くシーンがあるんですけど、あれ、ぜったいに女の子座りじゃない。笑 見えてないけど、間違いなくあぐらだと思います。そこがいい。

家だろうと、スケートをしに行った池のほとりだろうと、容赦なく座り込んであぐらをかいて小説を書く。それがジョー。まぁ様ジョーはあぐらが似合う。スカートなのに…って、帰ってからようやく思いが至るくらい。

たぶん、ジョー自体が「スカートを履いてるのでお行儀よくしなきゃ」という視点が1ミクロンもないので、観客の方も綺麗にそれを観劇中忘れられる、という感じでした。

 

3.ポニーテールで「かわいく」見えない

まぁ様ジョーの髪型は2つ。基本のポニーテールと、髪を切った後のショートボブ。

ボブの方は、先の記事でも書いた通り、朝夏まなとさんの頭身と顔面なので、すっきりと潔く顔がむき出しになる、美しい人にしかできないリアルショートでもよかったと思うんですけど。

(後、リアルで観たことがまだない髪型なので。単に欲望レベルでショートが見たいですすみません)

ポニーテールの方はもう! これしかなかった、というジョーっぷり。

一幕の間、ずっとジョーは飛んだり跳ねたりしてるので、ポニーテールがそれに連れて跳ねるんですよね。そのおかげで、ものすごくお転婆に見える。前髪もオンザ眉毛で、きらっきらの瞳が何にも邪魔されず、しっかり見えて。

このポニーテールが似合うってジョーだな、と思いました。

ポニーテールにビロードのリボンなので、ヘアスタイル的には「かわいく」なってしまってもおかしくないと思うんです。

でも、ポニーテールで凛々しくなるのがジョー。

朝夏まなとさんの髪型としては、後ろは言うことないので個人的にはもう少し前髪が長めで、斜めに流してる感じが最強なんですけど*1ジョーとしてはあれが大正解。

 

4.言い訳が下手

ところで、髪を切ったこと、どう考えてもあの瞬間にマーチおばさまにバレるじゃないですか。

なのに、少し身を縮めて視線を逸らすことでなんとかしようとするジョー。そしてバレた瞬間に、「切りましたけどそれがなにか」というテンションに移行するジョー。

言い訳が下手で、たぶん自分でもそれに気づいていて、いいやめんどくさいもう言い訳するのはやめよ! と、開き直るまでの一連の呼吸がすごくジョーっぽいな、と思いました。

マーチおばさまのこと苦手なんだよな〜という空気の出し方が、とっても悪い意味で正直者感があってかわいい。 

そういえば、最初にマーチおばさまのところに遅刻したときの言い訳も下手くそでしたね。笑 「はい、バレてますよねー。知ってまーす」って感じのジョーの顔がとっても印象に残ってます。

子どものときにも、『若草物語』にはしっかり心清い担当としてベスがいるので、ジョーはその人間っぽいところが好きだったことを思い出しました。

 

5.ヒーロー気質のわりにお調子者

さてさて。その人間っぽいところが、まぁ様ジョーはとってもお似合いで。

ジョーって、自分の書いてる流血ものの小説の中でもたぶん、ロドリーゴにシンクロして書いてるんでしょうし、根っからのヒーロー気質。

……なんですけど、けっこう適当かつお調子者なんですよね。正直、あんまり清く正しくない。笑

今回の舞台でも、わざわざ「なんであの木をここに置いておけなかったのか、今でもわからない」とはける前に言い放って、お母さまに、ため息とともに「夜になると不安だわソング」を歌わせてしまうくらいですし。

そもそもその木、お隣さんの家のだしな。伐るとき、がんがん根本蹴ってるしな。笑

でもそれが憎めない、というか。応援したくなる、というか。

トランクに腰掛けて脚をジタバタさせながら、姉妹の願いを叶えてるところなんてもう調子に乗ってる感満載で大好きです。

 

一幕のジョーが清々しく調子に乗ってるからこそ、みんなが若草の頃を抜け始めたときの切なさが、ぐっと来る。一幕からずーっと、ジョーはそうそう実現はできないことを、まるで簡単にできるみたいに言ってるんですよね。

でも、それを全部、このジョーなら本当にやっちゃうかもしれない、と信じさせる生命力がある、というか。

眩しくて目を細めたくなるジョーのよさが全部出てるな、と思いました。

「無敵のジョー」の魔法が解けかけるのは、みんなが若草の頃を抜け始めてから。

だから、一幕の途中までは、四姉妹にも客席にも完璧に魔法をかけてなくちゃいけないんですけど、文句なく無敵のジョーだった。すごいな、と思いました。

もちろん、馬に乗るのも、架空の剣をさばくのもとってもお似合い。男勝りなことはすべて似合う。

このジョーなので、そりゃあ隙あらば自分の小説も音読するでしょう、という説得力があったのもよかったです。劇中劇でナレーションをしつつも、全ての役を自分でもやるジョーが、もうそこだけ永遠に観ていたいくらい魅力的だったので。

 

6.怒ったり悲しいときにはへの字口に 

突然めちゃめちゃ細かいポイントですが、負の感情のとき、真一文字じゃなくて、への字口なの、あれ、わざとなんですかね?

めちゃくちゃジョーだな、と思いました。

ジョーは世界が思い通りにいかないときに、堪えるというより明らかに不満そうなんですよね。世界は自分が変えるものだと思ってるから。

個人的には、「親友のセオドア・ローレンス3世だよ」と自称してドアを開けさせて、いざ部屋の中に入ってきたら強引にキスしてプロポーズをする、という言葉にしてみるとなんちゅうやつだというローリーに対して、への字口で睨んでるところが好き。

役者さんご自身が作り出した愛され力に、うっかりローリーを許しそうになるけど、私はあのシーン、120%ジョーの味方です。

そして、キスをされたという物理的なこと*2よりも、理解されていなかったということに烈火の如く怒っている、と伝わってくるまぁ様ジョーの怒り方がとっても信用できる。

つらいシーンですが、ものすごくジョーとして信頼できるシーンでした。

 

7.ベスへの愛が重い

二幕でがつんっときた「ジョーってそうだよな」ってポイントは、個人的にここ。ベスへの愛がともかく重い。

いやー、そうですよね。だってジョーであるってことは、ベスにはなれないってことですから。

体が弱くていつも人のことを気遣い、自分のことを言わないベスが、実は四姉妹の中でいちばん強くて、体が丈夫でいつもみんなのことを思って行動し、自分のこともたくさん喋るジョーが、四姉妹の中でいちばん脆いところがある。

私は「弱い人こそ実は強い」「強い人こそ実は弱い」みたいな逆転の結論があんまり個人的な趣味として好きじゃないのですが*3、ジョーとベスの関係において、完全にそういう逆転の瞬間があるのも事実。

そのときのまぁ様ジョーの、だめな感じに重い愛の見せ方が、とってもジョーだなあと思いました。

愛というか、ちょっと依存っぽい感じ。

「あ、やばい。後もうひと押しで危険だな…」と、客席から思わず止めたくなる瞳というか。またその瞳が大きいから、よく見えるんだな……。

その直前にお母さまがいたずらっぽく言う「ふたりっきりにしてあげるわ」も、なんだその前フリは。笑 という台詞ですし。重い重い。危ない危ない。

見た目の佇まいの健やかさとのバランスなんですかね?

そもそもが、立ってるだけでジョーなジョーなので、ここがすごく危うく見えて、「ああ、だから朝夏まなとさんがジョーなんだな」と思いました。

 

8.男の人と喋ってる方が素っぽい

最後は異性への距離のとり方なんですが、これがもう完璧にジョーでした。

一幕のローリーと喋ってるとき、そして一幕・二幕ともにベア教授と喋ってるとき、どちらも、ものすごーく素。一切気を使ってない感じ。

言いたいことを言いたいように言ってるジョーとはいえ、マーチおばさまにもお母さまにも少し声を作ってますし、四姉妹で喋ってるときは「マーチ家の息子」を意識している感があるし、むしろ「素」ではないんですよね。

女性の中のジョーは、役割を演じている。

でも、男性と喋ってるときのジョーは「世間なんて知りません。好きに生きます」というのがフルスロットルで、なんの仮面もかぶってないな、と。

ぽんっぽんと痛快な台詞を飛ばす様が爽快で、男性は全員弟子か舎弟にしそうな勢いで、すごくジョーだな、と思いました。笑

余談ですが、まぁ様は傘の扱いが上手いなー。すごくおしゃれな小道具に見えますね。なんだあの持ち方。ずっと差しててほしかったです。

願わくば、傘を片手に踊りだしてほしかったくらいです。笑

 

結局は、これに尽きる 

 

他にも、舞踏会でプチフールを拝借してる指先とか、お父さまの手紙をみんなで読んでもらうときに、エイミー→メグ→お母さまと肩を抱いていちいち手を握り合うところとか。

「あ、それジョーですね、それもジョーです、すばらしい!」となるポイントはたくさんあったのですが、既にだいぶ忘れてしまいました。

それもこれもやっぱり、そもそもまぁ様が立ってるだけでジョーだったからなんですよね。

結局、ジョーの魅力って「全力で生きてる」ことじゃないですか。そして、自己肯定力が強い。二幕でそこがふっとかげって切なくなるのも、まず、明るいところが1000%明るく見えてないと全然切なくないですし。*4

そのためにまぁ様ジョーはずっとずっと動いていて、歌の音域も曲によってかなり幅広くて、本当にされる方は大変だったろうなと思うのですが。

私はただ一観客として、すごく幸せだったなという記憶を温めていようと思います。

朝夏まなとさんがジョーをやるときに間に合ってよかったな、と。

 

そして、本当に素晴らしい座組の舞台だったので、このままみなさんで全国無事に完走されることを祈っています。

なんとなく秋っぽい舞台だったせいか、今年の秋が早くも終わったような気がしています。笑

次は11月。『シスター・アクト』を楽しみに生きます。

 

 

*1:ポスターよりも更に少し長めくらい。

*2:これはこれで、かなり重大な怒りポイントではあると思うのですが。そして、訊かれてもないのに「僕のファーストキスだ」と申告するローリー。そういうとこだぞ。

*3:そして、この舞台の結論はそういう意味でもよかった。みんなそれぞれだめなとこもあるし強さもある、という感じで。

*4:知ってた、ってなる。